ご挨拶
 第21回日本遊戯療法学会を9月4日~5日の2日間、神戸女学院大学にて開催致します。「遊戯療法のあやなす世界~イメージとロジックと~」と題し、対象、実施環境、理論、技法など、多彩な遊戯療法の実践に学びつつ「遊戯療法の多様性と専門性」について考える時を持ちたいと思います。子ども時代に体験した環境や人間関係は、その後の生き方に大きく影響します。少子化の現代において、未来の宝である「子ども」を社会全体でどう守り、育んでいけるのかは、我々にとって大きな課題です。しかし、残念なことに子どもが子どもらしく過ごす場は縮小され、子どもは種々の「圧力」や「暴力」に晒されています。そのような子どもと養育者への対応として、遊戯療法の今日的意義は従来にまして大きいと申せましょう。 今回さまざまな現場での実践を通して、遊戯療法の根底に流れる“通奏低音”を知ることができるのではないかと期待しています。
 公開講演では、本学名誉教授で武道家の内田樹先生に「武道的身体知」についてお話いただきます。武道が感覚知を拓き、それがさらに生命力を賦活する流れから、遊戯療法を成立させる根本要素を示唆していただけるものと思います。続いてのシンポジウムでは「遊戯療法の多様性と専門性」と題して、理論背景の異なる弘中正美先生、田中康裕先生、平井正三先生、お三方の対話を通して技法を超えた専門性について考えます。指定討論は、山中康裕先生、伊藤良子先生にお願い致しました。さらに、本大会では初の試みとして、2日間にわたるワークショップを設けました。1日目は<習熟度別>とし、遊戯療法“初心者向け”のコース2本と“習熟者向け”のジョイント事例セッションを用意しました。2日目は従来同様、<テーマ別>ワークショップとなっております。2日間受講されますと、大会参加以外に臨床心理士の更新ポイントがさらに2ポイント付与されますので、皆さまどうぞ奮ってご参加ください。(公開プログラムとワークショップは非会員の方もご参加いただけます。)
 最後に、本大会のキーワード「あや」について。綾織は縦横の糸に加え、斜めに交差して糸をかけて織ることで丈夫になり、奥行きが生まれ、複雑な色彩、紋様、陰影を描き出します。また「あやなす」という言葉には“たくみに取り扱う”という意味もあります。縦糸、横糸に斜めにかかる糸が絡みあい「あや」なす状態、それは二者関係を超えた、より多彩で複合的なありようです。そこに遊戯療法を重ね合わせてみました。サブタイトルの「イメージとロジックと」も第三の要素に開かれたワーディングです。ちなみに、昔、生まれた子どもの初宮参りの際、その健やかな成長を願い、魔除けの印として額に×印を書く風習があり、それを綾子(あやっこ)と呼んだそうです。遊戯療法もまた、幼い子どもを守り、祈るいとなみとも言えるでしょう。そのような想いが本大会テーマにはこめられています。
 本学は小規模の女子大ではございますが、昨年、重要文化財に指定されたヴォーリス建築の美しいキャンパスのもと、皆さまと豊かな時を過ごせますよう精一杯つとめてまいります。暑い時期ではございますが、皆さまのお越しを心よりお待ちしています。

日本遊戯療法学会第21回大会準備委員長  國 吉 知 子